小規模な会社では、社長(役員)と会社との間で資金の貸し借りが発生するケースも多くみられます。あくまでも、会社の資金は会社の資産であり、社長個人の資金とは明確に区別して管理しなければなりません。
ただ、そうは言っても社長個人に多額の資金が必要になるケースが生じた場合は、会社のお金を借りることもあるかと思います。そのような場合にどのようなステップが必要かを説明します。
本来、会社は営利を目的とした組織であるため、利益を生まない行為は行わず、利益にならない行為は会社の目的に反します。したがって、会社の資金を誰かに貸し付ける行為においては、必ず金利を受け取ろうとするはずです。ですので、無利息で貸し付けるということはないはずです。もし、役員へ無利息で貸し付けた場合(社長が会社の資金を無利息で借りた場合)は、税法上その金利相当分はその役員への給与とされ、会社ではそれと同額の受け取るべき受取利息が発生し、役員のほうでは所得税が発生します。
金利と言ってもどのくらいの金利を設定すればよいのかですが、国税庁HP「No.2606 金銭を貸し付けたとき」に利息相当額として基準となる利率が載っています。
例えば、平成30年から令和2年中に貸付けを行ったものには1.6%となっており、これより低い金利や無利息の場合はその差額が上記のとおり給与として課税されてしまいます。
ただし、以下の場合は例外になります。
・災害や病気などで多額の資金が必要になった場合
・会社で金利に対して合理的な定めがある場合
・上記の利息相当額との差額が年間5,000円以下の場合
また、役員と会社との間に利益相反関係が生じることになりますので、株主総会議事録、取締役会設置会社では取締役会議事録を残しておく必要がありますし、会社として契約書もなしで貸し付けることはないので、金銭消費貸借契約書も作成する必要があります。そして、これらは役員だけでなく従業員に貸し付けを行う場合も基本的には同じ扱いになります。
会社の資金を決して使ってはいけないということはなく、きちんとしたステップを踏めば問題は生じないはずですので、税務調査などのケースに備えて議事録や契約書は必ず残しておきましょう。